肝臓・胆道・膵臓の病気

慢性膵炎Chronic Pancreatitis

慢性膵炎とは、膵臓で慢性の炎症が繰り返し持続されることによって、膵臓が破壊され、その後に繊維化がおこるなど、元に戻らない(非可逆性)変化をきたし、膵臓の機能が低下した状態をいいます。

持続または、反復する腹痛や背部痛(背中の痛み)が最初の症状で、やがて進行すると、膵臓の外分泌作用(消化酵素液の分泌)の機能不全とし、消化不良による脂肪便がみられたり、内分泌作用(インスリンなどのホルモンの分泌)の機能低下によって糖尿病になったりします。

原因

日本における慢性膵炎の原因としては、アルコール性のものがもっとも多く、男性では70%であり、女性を合わせても過半数を占めます。

原因が不明の突発性膵炎、胆石性膵炎とあわせて、この三つの原因が9割を占めます。

検査と診断

慢性膵炎は、膵石が腹部単純X線撮影やCTスキャン、超音波などで照明されれば、確実に診断できます。

また、膵臓の外分泌検査(セクレチン試験)により、膵液の重炭酸濃度の低下、液量、酵素の低下など、膵外分泌機能の低下が証明されれば確実となります。

このほか、便中のキモトリプシンという酵素の測定や、PFDと呼ばれる消化吸収した物質の尿への排泄能の検査などにより、膵臓の外分泌機能をみて、診断の参考にします。脂肪の消化吸収不良によって脂肪便が現われるのは、慢性膵炎のかなり進んだ時期です。

ERCP(内視鏡的膵胆管造影法)検査では、内視鏡を十二指腸へ進め、そこから膵管の造影を行ないます。慢性膵炎では、膵管(消化液である膵液の通過する道)に特徴的な変化がとらえられます。

最近では、MRCPと呼ばれるMRI(磁気共鳴画像装置)を利用した膵胆管像検査が、侵襲が少ない(身体の負担が少ない)ために、ERCPに先立っておこなわれることが多くなっています。

治療

膵臓の痛みがあり、炎症をともなう時期には、急性膵炎に準じた治療を行ないます。

炎症のすくないときには、鎮痛剤などによる疼痛治療を行ないますが、内蔵神経のブロックが効果を現わすこともあります。

痛みのない時期には、機能障害を補うためみ、かなり大量の消化酵素を内服したり、あるいは脂溶性ビタミンの不足に対して、総合ビタミン剤を服用したりします。

糖尿病の重い人では、インスリン治療も必要となることがあります。

日常生活の注意

慢性膵炎の食事性の因子としては、高タンパク、高脂肪、低脂肪、低タンパク、低栄養などの危険因子とされているため、バランスのとれた食事をとることが大切です。

とくに病気が進行して消化不良状態となっているときには、脂肪の摂取を少なくしないと、下痢をおこします。

アルコール性膵炎では、禁酒することが重要であるということはいうまでもありません。

慢性膵炎の予防には、飲酒をコントロールし、適量にすることがもっとも重要です。