免疫異常、代謝異常の病気
高尿酸血症/痛風
尿酸ということばから、尿が酸になる病気とイメージされるかも知れませんが、そうではありません。すべての人の血液の中に尿酸という物質は含まれていますが、その濃度(血清尿酸値)が高くなる病気を、高尿酸血症といいます。
血清中の尿酸の値が1デシリットルあたり7mg以上あれば、高尿酸血症と診断されます。
血清尿酸値は一時的に高くても、なんの症状もでませんが、高い状態が続くと、尿酸は静かに着実に、おもに関節に沈着していきます。
尿酸は針状の結晶ですので、痛覚神経を刺激して、突然キリで刺すような激しい痛みをおこします。これが痛風です。患者さんの90%以上は男性です。
高尿酸血症/痛風
高尿酸血症と痛風に分けて説明します・・・
高尿酸血症の原因
健康な人では、毎日700mgの尿酸が肝臓でつくられます。そのうち500mgが尿中に排泄され、200mgが汗や便の中に排泄されます。
つくられる尿酸の量が多くなるか、尿中への排泄が抑えられると、高尿酸血症になります。
高プリン食の過大摂取
尿酸は肝臓でつくられますが、その原料はプリン体(アデニン、グアニン)というものです。このプリン体は、細胞の核に含まれている物質で、動物にも植物にもあります。ですから、多くの食物の中にはプリン体が含まれているのです。
食品中に含まれているプリン体の量は差がありますが、多く含まれている食品は高プリン食と呼ばれています。
高プリン食を多くとると、肝臓に尿酸の原料がどんどん送られるため、血清尿酸値が高くなります。
多くの血球が壊される病気
血液中の赤血球と白血球にもプリン体が含まれています。健康な人でも、1日に決まった数の赤血球・白血球が自然に壊れ、その中に含まれているプリン体が血液中に放出され、尿酸に変わっていきます。
高尿酸血症をおこす血液疾患・・・
- 溶血性貧血
- 巨赤芽球性貧血
- 急性白血病
- 慢性白血病
- 悪性リンパ腫
- 骨髄異形逝成症候群
- 多発性骨髄腫
こうした病気では血液中に放出されるプリン体も大量になるために、血清尿酸値が高くなります。
激しい運動
個人の運動能力の限界に近い激しい運動、たとえば非常に速く走る陸上トレーニングとか、重量挙げを繰り返したりすると、筋肉から血液中に、別の尿酸の原料(キサンチンなど)が大量に流れ込み、一時的に尿酸が高くなります。
薬剤
病気を治す薬のなかに、尿酸が尿中に排泄されるのを抑えるものがあります。高血圧の治療薬である利尿剤は、高尿酸血症をおこすことで有名です。
腎臓の病気
慢性糸球体腎炎や多発性嚢包腎など、原因がなんであっても腎機能が低下してくると、血液のろ過がうまく出来なくなり、たくさんの老廃物が体内にたまってきます。尿素もその一つで、腎臓病の患者さんには、高尿酸血症がみられます。
肥満
太っている人は、尿酸の尿中への排泄量が減ります。実際、肥満の程度が強いほど、血清尿酸値が高い傾向がありますので、肥満が排泄力低下の原因になってると考えられています。
これは飲酒によっておこります。ふつう、飲酒量の多い人は、血清尿酸値が高くなっているものです。誰でもアルコールを摂取するだけで血清尿酸値が上がるのですが、いつも大量のアルコール飲料を摂取している人では、とくに血清尿酸値の上がり方が激しくなります。つまり、いつもアルコール飲料を大量に飲む人は、痛風にかかりやすいわけです。
痛風の原因
痛風は、高尿酸血症が原因となっておこります。1990~1995年の人間ドックのデータを調べると、成人の20%が高尿酸血症になっています。 人によって差はありますが、尿酸の高い状態が5年、10年と長く続くと、痛風発作がおこるのが普通です。
検査と診断
早朝の空腹時に採血して、血清尿酸値が基準(1デシリットルあたり7mg)以上あれば、高尿酸血症と診断されます。
尿酸は水に溶けにくく、基準値以上になると、全身に沈着し始め、関節炎と痛風結節という症状をおこします。
痛風の診断は、この二症状と、診断基準によって行われます。
関節炎と結節がみられる
おもな症状として、痛風性関節炎と痛風結節(しこり)がみられます。
痛風性関節炎
もっとも典型的な例は、ある日突然、足の親指の関節、とくにつけ根の関節(第一中足指関節)に、針を刺すような激しい痛みが生じ、赤くなって腫れてきます。これが痛風発作です。
この症状は、24時間以内にピークに達し、約10日で自然に消えます。
痛風発作は、手足のどの関節にもおこりますが、大部分(70%)は足の親指の関節に現われます。
軽 症
初めて痛風発作があっても、その後、出現しない時期が続きます。これを間欠期といいます。
40%の患者さんでは、一年以上もたってから二回目の発作がおこります。
こうした発作は前ぶれ無くおこるので、急性痛風関節炎といいます。
重 症
病気が重くなると、複数の関節が障害され、しかも間欠期がなくなって、いつも痛みが続くようになります。
この状態をとくに慢性痛風関節炎といいます。
痛風結節
尿酸が軟骨の内外に沈着して、外から結節(しこり)として触れる場合があります。これを関節結節といいます。結節の60%は耳たぶにみられ、ほかに足関節、肘関節、手指などにもみられます。触れると痛い場合と痛くない場合があります。
典型的な痛風は、診断が容易です。症状が外反母趾、慢性関節リウマチ、変形性骨関節炎などと似ていて区別ができない場合は、関節腔から関節液を採取し、これを顕微鏡で調べ、好中球(リンパ球の一種)に尿酸ナトリウムの針状結晶が見つかれば、痛風と確定されます。
痛風結節の場合も、そのしこりの中から結晶を見つけ出すことができれば、診断が確定できます。
合併症
高尿酸血症が続くと、それが原因で、つぎのような病気がおこります。
尿路結石
痛風の患者さんの20~30%に尿路結石がおこります。痛みの発作があり、X線検査を行って結石が見つかれば診断できます。
痛風腎
腎臓に尿酸が沈着してくると、腎臓の機能が低下します。腎臓の検査をすれば、診断できます。悪化すると尿毒症になります。
まず食生活の改善を
治療
血清尿酸値を1デシリットルあたり7ミリグラム以下にするのが基本です。症状がみられなくても、尿酸値が高ければ下げます。尿酸値を下げるためには、高尿酸血症の原因をさがし、それを除くことです。
また、尿酸値が1デシリットルあたり8ミリグラム以上あれば、高尿酸血症治療剤を服用する必要があります。
痛風の発作時には、非ステロイド系抗炎症剤を、できるだけ早く使います。痛む部分へ冷湿布は、痛みをやわらげる効果があります。発作の再発を防ぐために、24時間の安静を取ることをお勧めします。
ふだんから血清尿酸値を1デシリットルあたり6ミリグラム以下に下げておけば、痛風発作はほとんどおこりません。
日常生活の注意
痛風の患者さんは、1965年の調査では、約400人という報告でした。ところが、1990年前後の厚生省の調査では、推定28万人と激増しています。
遺伝が原因で痛風になることもありますが、日本ではきわめてめずらしく、したがって痛風の患者さんが、このように爆発的に増えた原因は、毎日の生活のなかにあると思います。
痛風の発作をおこした人は、つぎのチェックを行ってください。
- 自分の健康に無関心で、仕事中心の生活をしていませんか?
- 太っていませんか?
- アルコールの飲みすぎではありませんか?
- 美食家ではありませんか?
- 水分の補給をしていますか?
痛風にかかってる人は、食生活を含め、自分の健康に無関心なことが多く、過度の緊張やイライラが続くとストレスがたまり、それが発作の引き金になります。不健康な生活を続けないように注意する必要があります。
痛風にかかる人には、大食漢を自認している人が多く見られます。肥満しているほど、血清尿酸値が高い傾向があります。太っている人は、減量する必要があります。
γ-GTPが高い長期飲酒者や、短期どしゃぶり型の飲酒習慣のある人には、痛風の発作が多くみられます。ビールはとくによくありません。
エビ、レバー、ステーキ、シラコ、大豆などを好んで食べていませんか?これらは、すべて尿酸の原料であるプリン体を多く含む食品です。
プリン体を制限すると、尿中の尿酸排泄量が低下するため、尿路結石の予防にもなります。
血液が濃縮されると、血清尿酸値が上がります。また、尿が濃縮されると、尿路結石がおこりやすくなります。
予防のためにも、多めの水分をとることがたいせつです。とくに夏場や運動した後は、水分補給を忘れないようにしてください。