皮膚の病気

手・指皮膚炎(手湿疹、主婦湿疹)

主婦や水仕事の多い人におこります

手、指の背面や、爪の周囲を中心に、かゆみの強い紅斑、小水疱、丘疹などができるもので、かきつぶすとびらんやかさぶたになります。手掌(手のひら)や指腹部は角層が厚いため、湿疹は比較的できにくいようです。逆に乾燥傾向の強いタイプもあり、指腹部、手掌にできやすく、進行すると亀裂、びらんができるものは進行性指掌角皮症といいます。

以前は、水仕事の多い主婦に多くできたため主婦湿疹と呼ばれていました。現在では調理師、美容師、医療従事者やファーストフード店の店員など、特定の職業の人にもよく見られます。慢性化すると皮膚が厚くゴワゴワになり、治療効果があがらなくなるため、しばらく休職しなければいけないこともあります。

また、清潔志向がこうじて毎朝シャンプーをしたり、電車の吊り輪やドアなど人が触れたものへの嫌悪感から過度に石鹸で手洗いすることでおこることがあります。最近では小学生にもみられます。

慢性刺激性とアレルギー性

手、指の皮膚炎は、洗剤などの慢性刺激性が誘因となって誰でも生じる皮膚炎と、消毒薬、ゴム手袋、シャンプーなどの特定の物質に過敏な人だけに生じるアレルギー性の皮膚炎とに大別されます。

慢性刺激性の皮膚炎は冬季に悪化することが多く、まず手と指全体が乾燥してゴワゴワになり、落屑が増え、指紋、掌紋が不鮮明になってきます。ついで亀裂やびらん、紅斑、小水疱など、炎症性の症状がおこり、かゆみもでてきます。これらの変化は本来、皮膚角層に存在し、外界からの刺激に対して防御的にはたらくセラミドという脂質などでできた物質が、洗剤などの慢性的な刺激によって減少して皮膚のバリア機能(防護機能)が低下しておこるとされています。

冬季の乾燥した環境下で水仕事をすると、手についた水分が蒸発する過程で気化熱を奪って冷え、角層の水分が減少するため、さらに乾燥や荒れが進むのです。これは年末についた鏡餅が、しだいに乾いてひび割れていく過程ににています。アトピー素因のある人はこのような変化をおこしやすく、結婚して、育児や炊事仕事が増えると悪化することがあります。

アレルギー性の皮膚炎は、毎日皮膚に接触する物質に対するアレルギーによっておこり、かゆみの強い丘疹、紅斑性の皮膚炎が特徴です。ゴム手袋に使われているゴム硬化剤や染料、石鹸、シャンプーなどに含まれる香料、医療用消毒液、美容室のパーマ液の成分などに対して過敏な人は、ごく微量でも触れると皮膚炎をおこします。これはT細胞と呼ばれるリンパ球のしわざです。

とくにバリア機能が低下した皮膚では、アレルギーをおこす物質が皮膚から浸透しやすいため皮膚炎をおこしやすくなると考えられています。

治療

外用剤は尿素軟膏などの保湿剤、白色ワセリンなどを患者さんの好みに応じ、1日4~5回うすくぬります。

手掌や指腹部の角化が強い場合は角質溶解作用のある5%サリチル酸ワセリンの塗布や、尿素軟膏を外用後ラップでおおう密封療法(ODT)などが有効です。密封療法は汗でむれることもありますから、夜間のみ行います。

亀裂部には、夜間のみステロイドホルモン含有テープを貼り付けます。

紅斑、小水疱などの炎症症状が強い場合は、ステロイド軟膏と尿素軟膏を同量混合した軟膏を1日数回外用し、就寝時には同軟膏を外用した後、包帯のかわりに木綿の薄い手袋をはめます。この場合、ステロイド軟膏はあくまで急性期にのみ使用し、ハンドクリームがわりに長期間使用しないよう注意しましょう。

手指のバリア機能の低下にともない、細菌や真菌の感染を合併することがあります。手の白癬は非常に少なく、カンジダ性の爪囲炎や爪甲剥離、指間びらんなどが多いのですが、この場合は抗真菌剤で治療します。