免疫異常、代謝異常の病気

花粉症Pollinosis

特定の花粉が原因に

花粉症とは、おもに裸子植物の花おしべにできる花粉が、風にのって鼻や目に入り、アレルギー症状をおこす病気です。

大きく分けて、樹木の花粉と草の花粉があり、開花期になると花粉症の患者さんは、特定の花粉に反応して、くしゃみ、鼻みず、鼻づまり、目のかゆみ、流涙などの症状がでます。

日本に多い「スギ花粉症」は東北より西に多く見られ、毎年2~3月の初めから症状が現われ、4月の終わりまで続きます。

北海道ではイネ科の植物の花粉による花粉症が多く見られ、多くの患者さんがこの病気で悩んでいます。

原因

花粉症の原因として、スギ花粉がよく知られていますが、他にもカモガヤ、チノシーなどのイネ科、ブタクサ、ヨモギなどのキク科、カナムグラ(クワ科)などの草の花粉のほか、スギと同類のヒノキ、ハンノキ、マツなどの樹木花粉による花粉症があります。ある地域に特有のヤシャブシ(本州)、カンバ(北海道)といった植物の花粉による花粉症もあります。

いずれの花粉も非常に軽く、風にのって受粉できるようになっているため、多少の風が吹くだけで、空中に大量に飛ぶという性質があります。

花粉の飛散期は、それぞれの植物の種類によって異なるので、一年のなかである季節だけに発生するのであれば、その季節にだけ飛散する花粉が原因と考えられます。

潜このような病気はアレルギー反応によっておこります。

そのしくみは、ある花粉が大量に鼻や目に入ると、体内で免疫反応がおこり、花粉という異物(抗原)に対して結合するIgE抗体というもにが増え、免疫的に記憶されます。

つぎに目や鼻に入った花粉抗原は、それらの粘膜で抗体と反応し、その情報を受けて、粘膜にある肥満細胞と呼ばれる細胞から、神経や血管を刺激するヒスタミンなどの刺激物質が放出され、かゆみや鼻汁の分泌などの症状がおこるのです。

スギ花粉症の患者さんが、昭和50年を境として急激に増えたのは、戦後の植林政策によって、スギの花粉量が増えた事に加え、自動車の増加にともなう排気ガス、食生活の変化などの影響によりIgE抗体がつくられやすい環境になったためとみられています。

症状

花粉症の特徴は、鼻と目に症状がでることです。鼻の症状は、くしゃみ、鼻みず、鼻づまりで、さらなる花粉の量(期間)が増えると、のどにも、かゆみや痛みなどの症状がでてきます。

目の症状は、、あぶたの粘膜のかゆみや流涙がみられます。アトピー性皮膚炎をともなう人は皮膚症状の悪化もみられることもあります。

これらの症状は、花粉の飛散の開始とともに現われます。なかでもスギ花粉の場合は、春一番といわれる南風が吹き始めると同時にこれらの症状が急に現われます。

検査と診断

毎年一定の季節になると、必ずこのような症状が出る場合は花粉症が疑われます。確実に診断するための一般的な検査法としては、症状そのものがアレルギー反応によるものかどうかを調べるものと、アレルギー反応によるものであるならば、その原因(抗原)は何かを調べるものの二種類があります。

前者については鼻や目の症状がウイルスや細菌による感染など、ほかの病気の可能性もあるので、これらの病気を除外する検査が行なわれます。このために、鼻汁の検査を行なって鼻汁中の好酸球という細胞が増えているかどうかを見ます。

もし、好酸球が鼻汁中に増えていれば、症状がアレルギーによるものであると診断できます。

つぎに抗原は何かを調べるための検査が行なわれます。からだの中に、どういう抗体に対するIgE抗体が増えているかをみるため、皮膚テスト(ツベルクリン反応のように皮膚の浅いところに抗原を含んだ液体を注射する、あるいは皮膚に傷つけたところに抗原液をたらして反応をみる)や、患者さんの血液をとって、そのIgE抗体を試験管の中で測定します。

ある花粉に対するIgE抗体が陽性と出たら、その花粉の飛散時期と症状のでる時期が一致することを確認します。

 

一般的には皮膚テストまたは血液検査によるIgE抗体の検査は、花粉など吸入性抗原10種類を同時に行なう事ができます。その抗体のなかから、例えばスギ花粉だけが陽性とでて、2~4月に症状があると確認されれば、スギ花粉症と診断がつくわけです。

 

皮膚反応や血液検査で、IgE抗体の値が陽性とでても、季節の発症がなければ、花粉症とは診断されません。

治療

治療としては、抗原との接触を避けること、薬物療法、減感作療法、手術などがあります。

 

症状を改善するために、種々の薬物が用いられます。抗ヒスタミン薬、抗アレルギー薬、ステロイド薬、抗コリン薬、血管収縮薬などです。

 

抗ヒスタミン薬は、鼻、目のかゆみ、くしゃみ、鼻みずを抑える作用があり、効果が30分以内に現われます。

 

ただし、副作用として多少の眠けがともなう場合もありますから、車の運転時などには注意が必要です。最近は、眠けのない抗ヒスタミン薬が発売されるようになりました。内服するものと、局所に噴霧するものとがあります。

 

抗アレルギー薬は、肥満細胞から刺激物質の放出を抑えるはたらきがあり、効果が現われるまでに長期間の仕様が必要ですが、くしゃみ、鼻みずのほか、鼻づまりにも効果があります。

 

また、アレルギー症状の発現を予防する効果があることも、抗アレルギー薬の特徴といえます。これにも、内服するものと噴霧するものがあります。

 

ステロイドとは、副腎皮質ホルモンのはたらきをもつ薬で、炎症をしずめる強い作用のほか、細胞の数、性質を変化させる効果があります。

 

この薬には、ほかの薬では得る事のないこのような作用がある反面、経口投与(内服)によって免疫能の低下、高血圧、糖尿病の悪化など全身の副作用があります。現在、一般には使用量を少なくすることによって、副作用をきわめて少なくしたステロイドの外用剤がつかわれています。こうした局所ステロイド剤は、鼻のかゆみをなくし、くしゃみ、鼻みずの回数を減らしたり、鼻の粘膜の腫れをとるのに有効です。効果がでるまでに数日かかります。

予防

精神的ストレス、睡眠不足、疲労、多忙といった都市型の生活は、大気汚染とともに鼻粘膜の抵抗力を弱め、正常の機能を乱す原因と鼻汁の分泌能を変え、粘膜を流れる血液量を変えてしまい、異物が侵入しやすくなる原因にもなります。

生活環境の改善は、治療にも予防にもつながることを、よく理解しておかなければなりません。